読書覚え書き

『白仏』

中山美穂の夫、辻仁成氏の著作は今回の『白仏』で初めて読んだ。 書き手の端くれとして、こういうのを読むたび、 「小説家にはなれないなあ」とため息が出る。 当然だけど、うまいです。さすがです。 著者の祖父をモデルに書いたそうで、九州を舞台にある鉄…

『デフレの正体』 

『デフレの正体』というタイトルのこの本、なぜデフレになるのか ではなく、景気はどのようによくなったり悪くなったりするかを 人口動態から説明したものである。 たぶん、景気の良し悪しはいろんな要因があるけれども、 もっとも影響が大きいのが人口、そ…

『人間の往生』

前著『「痴呆老人」は何を見ているか』がとてもおもしろかったので、 今回も購入して読んでみました。 それにしても新潮新書はいい本ばっかり出てますね。 前回の内容よりも平易になっており、人はみな自分の紡いだ意味の世界に 住んでいることを前提に話は…

『迷える者の禅修行』

「これも修行だと思えば」と、しんどい出来事が起こると 思うことにしていた。 仏道のしゅぎょうには「修行」の漢字をあて、 その他の訓練の意味では「修業」の字を当てる。 いままで厳しさのニュアンスを伝えたいときには「修行」を 使っていたが、今後考え…

『世界同時不況がすでに始まっている!』

『世界同時不況がすでにはじまっている!』は 元大蔵官僚で、経済学者の榊原英資氏による本である。 経済学の基本的なところから丁寧に解説してくれる本で、 新しい概念を提唱するとか、新しい発見をしたといった内容ではない。 現実に起こっている経済の現…

『人はひとりで死ぬ』

『人はひとりで死ぬ』の著者は、『葬式はいらない』などの著作を ヒットさせた宗教学者の島田裕巳氏である。 テーマは無縁社会で、宗教の側面から論じている。 無縁社会というが、そもそもそれをみんなが望んだのではないか というのが、この本の出発点にな…

『ウェブはバカと暇人のもの』

著者の中川氏はあるニュースサイトの編集者で、 自身が「ネットの住人」でもあるらしく、その辺の事情に詳しい。 単なるネットで起きている現象について述べているだけでなく、 後半ではネットマーケティングについて仔細に述べている。 それもそのはず彼自…

『仏像に恋して』

最近、仏像が大変人気なんだそうな。 昔は中高年のマニアックな趣味だった仏像鑑賞が、 いまや女子(元気のいい女性のことをいうらしい)もたしなむ ものになったらしい。 で、そんな女子(漫画家)が描いたのがこの本。 といっても全編漫画で、彼女がどうい…

『認知症と長寿社会』

新聞協会賞などいくつもの賞を受賞した、信濃毎日新聞の連載を まとめた新書である(講談社現代新書)。 ここには長野県とその周辺に住む認知症の人々の様子と、 その周辺の人々の艱難辛苦の日々が綴られてある。 しかも実名で掲載されている。こんな連載は…

『「平穏死」のすすめ』

時代の要請で必然的に出てきた本という気がする。 この本では、主に終末期における胃瘻の弊害と、それに替わるケア、 臨終までのあり方を説いている。 書いているのは、世田谷区にある特養ホームに勤務する石飛幸三医師。 氏は長く外科医としてつとめ、晩年…

『深い河』

遠藤周作氏の本を初めて読んだ。 これも昔、友人に借りたもので、読まずに返しそびれたもの。 インド旅行のツアーに集まった面々が、 ある者は亡くした者の面影を探し、ある者は愛するものを見い出しに、 ある者は過去を払拭するために、もがく物語。 全体を…

『流星ワゴン』

重松清氏の作品を初めて読んだ。 友人から勧められた『流星ワゴン』。 38歳、一児の父親が、「サイテーな現実」から逃げようともがくが、 他人のある交通事故をきっかけに、現実と向き合うようになる物語。 重松清氏は岡山県出身、早稲田大学卒業後、出版…

『遺品整理屋は見た!!』

『遺品整理屋は見た!!』は、 遺品整理業を営む会社社長の本です。 遺品整理とは、遠隔地に住んでいるなどの理由で、 死者の遺品整理のできない遺族が依頼し、 遺品の整理などを行うことです。 最近、遺品整理を業者に委託する人が増えているんですね。 独…

『日本人の死に時』

『日本人の死に時』(久坂部羊著)という本を読んだ。 私はアンチエイジングよりも、アンチ・アンチエイジング派だ。 要するに、「人間、年相応でよい。若く元気でいることばかりに 価値が置かれる社会は生きにくい」と思っている。 著者の久坂部氏は老人医…

『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』

『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』という本は、 建築士である著者の坂口氏が、路上生活者から生活の術を授かったことを 契機に、「家」というものを、既成概念なしに考察してみた本である。 フリーミアムという言葉が流行ったけれど、 それはビジネスの…

『女系家族』

何度も映像化されている、『女系家族』(山崎豊子著)を 新潮文庫で読んでみました。 3姉妹が泥沼の遺産相続劇を展開する話ですが、 最近映像化されたのは、高島礼子、瀬戸朝香、香椎由宇の3姉妹に加え、 米倉涼子を配したキャストでしたね。 ドラマは見て…

『これからの「正義」の話をしよう』

ハーバード大学の教授、マイケル・サンデルによる大人気の 哲学授業を書籍化したのが『これからの「正義」の話をしよう』だ。 彼の授業はNHKでも放送され、話題になった。 哲学というと難しい響きがあるが、現実に起こった事件や出来事を 題材にして、「正義…

『ダーウィンの進化論入門』

進化論を提唱したダーウィンの生涯を追いながら、 進化論について丁寧に説明してある本だ。 世の中がダーウィンの進化論をどういうふうに受けとったかということが 書かれているのだが、ダーウィン自身が奴隷制度廃止論者だったことは 初めて知った。 生物は…

『ほんとの野菜は緑が薄い』

無農薬無肥料による、いわゆる自然栽培を提唱する本。 有機栽培は有機肥料に問題があることや、 自然栽培に移行してもしばらくして畑の不純物が 抜けるまでは本物の野菜は育たないこと、 自然栽培をしていても、自家の種でない限り、 買った種に農薬が含まれ…

『電子書籍の基本からカラクリまでわかる本』

『電子書籍の基本からカラクリまでわかる本』は、 電子書籍のビジネス的な裏舞台がよく書かれており、 他の「電子書籍本」のように、一般読者を想定したというより、 業界人や、これから電子書籍市場に打って出ようとしている 他業種の人たちが読むと、とて…

『生態系ってなに?』

『生態系ってなに?』という本を読みました。 この本は、自然界の動植物の生態系の仕組みを縷々解説したもので、 進化論や遺伝子の話も多く出てきます。 本筋とは関係ないところですが、2人目の子どもが生まれたこともあり、 遺伝子の話に興味をひかれまし…

『究極の田んぼ』

『奇跡のリンゴ』という本が売れたので、 同じような系列のこの本を手にとってみました。 千葉県で稲作農家を営む岩澤信夫さんという方が著者です。 こういう書籍にはめずらしく、ライターを立てずに 岩澤さん自ら執筆しているものと思われます。 内容はとて…

『もし高校野球の女子マネージャーが・・・』

『もし高校野球の女子マネージャーが ドラッカーの「マネジメント」を読んだら』 が正式なタイトルである。 内容はタイトルどおりで、 最も有名なビジネス書といってもいい、オーストリアの経済学者 ピーター・ドラッカーが記した『マネジメント』を読んだ野…

『FREE』

翻訳書で350ページの本で14万部という異例の売上げを 達成しているのが『FREE <無料>からお金を生み出す新戦略』だ。 デジタル社会における「無料」がどれだけ世の中に浸透しているか、 そのうえでどのように利益を上げていくかが書かれている。 …

『痴呆老人が創造する世界』 

『痴呆老人が創造する世界』(阿保順子著 岩波書店)という 本を読んだ。 『「痴呆老人」は何を見ているか』を読んでから、 「痴呆老人」をキーワードにして広げて読みたかったからです。 この本は看護学を学んだ著者が、痴呆老人病棟での長期の フィールド…

『仏教プチ入門』

哲学としての仏教に興味があるのは、 このブログで何度も書いてきました。 縁あってこの本をいただき、読んでみました。 この本では仏教の修行体験記を中心に、仏教の何たるかについて 初心者の視点を大切に書かれています。 タイトルからしてビギナー向けで…

『ゴーストライター』

タイトルに惹かれて読んだ。 多くのゴーストライターは、そう呼ばれるとあまりいい気はしないと 思うが、私は積極的に「ゴーストライターもやります」という。 そのほうが一般的には理解してもらいやすいからだ。 本書は、前英国首相が回顧録を出版するに当…

『「痴呆老人」は何を見ているか』

『「痴呆老人」は何を見ているか』を読了しました。 この本はタイトル通り、「痴呆老人」がどんな世界に住んでいるか 人間の認知のシステムからアプローチした本です。 この本から私が学んだことは多いのですが、ひとつ大事な点を挙げると 「つながり」こそ…

森はあなたが愛する人を守る

『森はあなたが愛する人を守る』は森林生態学の宮脇昭先生と、 フィトセラピーを標榜する池田明子氏による共著である。 宮脇先生の本は何冊か読んでいるが、6割ぐらいは同じ内容だ。 一貫して昔から日本にあるシイ・タブ・カシ類といった広葉樹の森林を つ…

般若心経の本

実家の宗教は真言宗なのだが、祖母の逝去にともない両親は お経を覚えて49日の間、唱えなければならないらしい。 お寺さんからCDをもらってきたので、それを聞いて覚える。 高野山真言宗のお経は般若心経である。 ぼく自身はお経を覚える必要はまだない…