『森はあなたが愛する人を守る』は森林生態学の宮脇昭先生と、
フィトセラピーを標榜する池田明子氏による共著である。
宮脇先生の本は何冊か読んでいるが、6割ぐらいは同じ内容だ。
一貫して昔から日本にあるシイ・タブ・カシ類といった広葉樹の森林を
つくることの重要性を説いている。
今回は「鎮守の森」として、地域で森がどのように扱われてきたかを
少し詳しく説明してある。
森林インストラクターの勉強をしている人なら勉強の一貫として
この本を手にとってみてもいかもしれない。
近年、植物の人体への影響が科学的に解明されるようになってきていて、
フィトンチッドという植物由来の成分が、人間にリラックス効果を
もたらすことが実験によって明らかになっている。
今後、人体のどこの部分に働きかけているのか、具体的に生理学的に
解明されるようになるだろう。
「鎮守の森」という宮脇先生の考え方は、これまで針葉樹ばかり
植えてきた日本の国土開発の反省から省庁も注目するようになっており、
広島県では官主導による「宮脇式」の造林がはじまっている。
坂本龍一主催の団体など、森林を守ろう、森林をつくろうとする
動きはどんどん活発化しているので、これらの団体が一致協力して
大きなうねりになってほしいと思う。
それはさておき、この本で印象に残った一説。
植物には最高条件と最適条件がある。
最高条件というのはすべて生きるための条件が揃った状態。
植物は最高条件よりも、それより少し厳しい条件、
ちょっと我慢しなければならない環境が最も生育に適した
最適条件だという。
尾根マツ、谷スギ、中ヒノキといって、水分環境のよい場所を好むスギは
谷が最高条件だが、実際は中腹より上でもよく育つという。
これも最適条件で説明がつく。
人間もちょっと我慢するぐらいがちょうどいい環境だ。なるほどである。