『「痴呆老人」は何を見ているか』

『「痴呆老人」は何を見ているか』を読了しました。
この本はタイトル通り、「痴呆老人」がどんな世界に住んでいるか
人間の認知のシステムからアプローチした本です。


この本から私が学んだことは多いのですが、ひとつ大事な点を挙げると
「つながり」こそが人間にとって非常に大切なことであることです。
記憶を通じて、適切な情報とつながっていることが
生存を有利にするといいます。
自分はどこで生まれ、どのように育ち、さまざまな経験をして、
どんな友人や配偶者を得たかという、記憶としての「つながり」が
人間にとって情緒の安定、精神的な安定をもたらすということが
とてもよくわかりました。
著者は「退行」や「妄想」といった認知症特有の症状は
「痴呆老人」の生命維持のための不可欠な反応だといいます。
この本では後半に「ひきこもり」についても書かれていますが、
ひきこもりも「つながり」の欠如によるものといいます。


最近見たテレビ番組でも、「片付けられない人たち」は孤独、
つまり他者との「つながり」の欠如を指摘されていました。
また、うつ病や自殺者の精神状態も「つながり」の欠如が
ベースとなっている説があります。
私は今の時代のキーワードはずっと「孤独」だと思ってきましたが、
「孤立」であり、「つながりの欠如」でもあるということでしょう。
なんだか最近、いろんなところで見聞きしたものが
いっぺんに「つながり」というキーワードに、私のなかで収束しました。
人間は社会的な動物なので「つながり」がなくなると、
不安を感じ、情緒不安定になるのでしょう。
それは便利な都市生活や自由の代償なのかもしれません。
「つながり」は記憶によって構築されるので、年をとって
記銘能力が衰えるとつながりがほどけていき、痴呆となるのだという。


私のなかで「つながり」が来年のキーワードの一つになりそうです。