『ウェブはバカと暇人のもの』

著者の中川氏はあるニュースサイトの編集者で、
自身が「ネットの住人」でもあるらしく、その辺の事情に詳しい。
単なるネットで起きている現象について述べているだけでなく、
後半ではネットマーケティングについて仔細に述べている。
それもそのはず彼自身、大手広告代理店出身だからだ。
それはいいとして、ちょっと乱暴なタイトルなんだけど、
書いてある内容はきちんとしている。
ネットで「祭り」になるのはどんなことなのか、
クレームをつけてくるやからはどんな人達なのかについて書いてある。
最近でも元日本代表選手と人気モデルの密会をツイッター
実況中継した大学生を、ネットの住人が実名、住所、所属大学、
家族、趣味、過去の日記まで暴きだし、ネット上で晒し、
袋叩きにするということが起こった。
有名人といえどプライベートを公にバラすようなことはやるべきでないが、
家族まで調べ上げてネットにさらすようなことは明らかにやりすぎだ。
著者は、ネットで叩かれやすい項目として
「上からものを言う」など10個上げている。
これがどれもうなづけるものばかりなのだ。
「上からものを言う」は私も気をつけている。
ネットでこれは厳禁。物申したいときは、自虐とセットにすべき。
そして、「こうしたことから、自分はこのように学んだ」という
書き方にするのだ。これなら個人が何から学ぼうと勝手だから、
誰にも文句をつけられる筋合いはない。
自慢になる類の話も極力しない。これも自虐とセットにして逃れる。
こうしてネットで特定の個人を血祭りにする人たちは、
明らかに時間に余裕がある人たちであり、著者は
「フリーター、学生、ニート、主婦」であると推測している。
ただ、この人たちがなぜ「血祭り」をやるのかはわからないとしている。
私は「社会とつながりを欠いた人たちが、自分も何かの役に立っている」
という実感を得たいための行動のような気がするのである。
私たちは何かの役に立つということを繰り返し言い聞かされて育った。
だから「何かの役に立たないと生きている意味がない」と感じてしまう。
実社会とつながりのない人は、どこかでつながりたいと思っていて、
役に立ちたいという意識で血祭りをやってしまうのだろう。
ある意味で、真面目な人たちなのだ。
ネットで特定の個人を叩く人たちは、だいたい「誰かの迷惑になる」とか
大義名分を振りかざす。「自分は正しい」と信じる人たちだ。
ネットで叩かれやすい項目の中に「反日的なことをいう」が
挙げられているのがその証拠だ。
社会につながりのない人たちであっても、
誰でも帰属できるものは、日本だからだ。
ニートでもフリーターでも日本になら帰属できる。
彼らのいわば「親日度」はかなり高い。
ただ、彼らがネットでどんなに騒ごうと
一般社会ではほとんど話題にならない。
話題になるのはテレビでやってた日本代表であり、ダイエット情報であり、
伊達直人〟なのだ。
「いまはまだテレビが隆盛」というのも本書で語られている。
その通りだと思う。
本書はサイト運営について非常に示唆に富んだことが描かれてあるので、
サイト管理者は読むときっと役に立つと思う。
私もこのブログを書くのに役立った。
今後も気をつけて書こうと思う。