『女系家族』

何度も映像化されている、『女系家族』(山崎豊子著)を
新潮文庫で読んでみました。
3姉妹が泥沼の遺産相続劇を展開する話ですが、
最近映像化されたのは、高島礼子瀬戸朝香香椎由宇の3姉妹に加え、
米倉涼子を配したキャストでしたね。
ドラマは見ていませんが、これらの女優さんたちをイメージしながら
読み進めました。
まあ、よくぞここまで意地悪で、欲の皮の張った人間を描写できたなと。
ここまであからさまに欲深い人がいるんかな。
たぶんいるんでしょう。私が知らないだけで。


大阪の老舗木綿問屋の主人が死んだところから話は始まる。
この人の財産をめぐって、3姉妹と、側室夫人、大番頭、親族などが
遺産分捕り合戦を行う。
それぞれの立場と思惑が詳細に書き込まれており、
個々の行動のつじつまがあっていて、すっきり読める。
こんなに複雑に絡み合う話を、破綻なく構成できる人の頭の中は
どうなっているんだろうと思う。
最後は罪を犯した人がその責任をとらされ、欲の皮のつっぱった
人たちは損をすることになり、カタルシスを得られる。
敬服するのは、相続に関する法律や、山林の権利関係、土地建物の評価に
ついてなどの専門分野のことがらをわかりやすく書けるほどに
深く勉強し、理解されていること。
これはすべてのもの書きが見習うべき姿勢ですよね。
また氏のほかの作品も読んでみたいです。