『世界同時不況がすでに始まっている!』

『世界同時不況がすでにはじまっている!』は
元大蔵官僚で、経済学者の榊原英資氏による本である。
経済学の基本的なところから丁寧に解説してくれる本で、
新しい概念を提唱するとか、新しい発見をしたといった内容ではない。
現実に起こっている経済の現象をどのようにとらえるか
というテーマで書かれている。
ちょっと気になるのは、政府と地方の債務残高が1000兆円を超える
だから国債が危ないという話のなかで、国債の95%は国民からの
借金によるものだから、まだまだ平気だ、財政再建は先延ばしにして
いまは大型予算を組み、経済成長をはかるべきだというのである。
国債の95%が国民から」というのは、政府が出している国債は、
金融機関が買っていて、金融機関はその原資のほとんどを国民からの
預貯金でまかなっているという構図である。
「あの国の財政はあぶない」となると、みんなが国債を換金するが、
こうなるとデフォルトという状態になって、国家財政は破綻することに
なる。しかし、国への信頼が厚い日本人はそんなことをするはずがなく、
だから「国民に借金しているうちは大丈夫」という理論になる。
この理論に異を唱える人も多いが、実際のところどうなのか難しい。
どの世代かがかならずツケを払うことになるので、
みんなが先送りにしたいわけだ。
でも、お札が紙くず同然になってしまう、ハイパーインフレ
経済政策では制御することはできないと言われている。
現金が紙くずになると困るので、みんな外貨預金やゴールドなどの
現物資産に投資しているわけだ。
私たちの現実の生活においても、将来の蓄えというものを、
こうした状況を考慮したうえで準備しておく必要がある。
安くて文章も読みやすいので、現在の大まかな経済の状況を
知るうえでは、よい本かもしれない。