『ダーウィンの進化論入門』

進化論を提唱したダーウィンの生涯を追いながら、
進化論について丁寧に説明してある本だ。
世の中がダーウィンの進化論をどういうふうに受けとったかということが
書かれているのだが、ダーウィン自身が奴隷制度廃止論者だったことは
初めて知った。
生物はすべて祖先をひとつにし、直接の子孫はサルであることを
当時の世の中に向かって提唱することは、大変な勇気がいっただろう。
なにしろ、キリスト教では人間は神がつくったものなのだから、
進化論が受け入れられるはずはないのだ。
ダーウィンが進化論を研究した動機のひとつは、
奴隷制度に反対するためだったともいわれているという。
人類に民族の優劣がないことを証明したかったのだろう。
そこのところをこの本でも最後にこうまとめている。


「種に優劣がないのと同様、種内にも優劣はない」
「差異に優劣や意味などない」


生物はすべて種を保存するべく、進化してきた。
とはいえ、それはその生物の進化しようとする意志によるものではなく、
突然変異と自然選択によるものだということ。
だから、違いに意味や優劣などなく、たまたま環境に適したものが
生き残ったにすぎない。
そして、環境に適合するものは滅んでいくしかなく、そうすることで
進化が促進されるということになる。
しかし、だからといって弱者を切り捨てるべきではなく、
逆に共存する環境を人間自らが構築するべき。
それこそが人間たるゆえんである。
そういうところまでこの本では踏み込んで書いてある。
ダーウィンの進化論は、いまのところ有効で、生物は進化することが
多くの研究者から認められているところ。
進化論を学ぶうえでかっこうの一冊だと思う。