『人はひとりで死ぬ』

『人はひとりで死ぬ』の著者は、『葬式はいらない』などの著作を
ヒットさせた宗教学者島田裕巳氏である。
テーマは無縁社会で、宗教の側面から論じている。
無縁社会というが、そもそもそれをみんなが望んだのではないか
というのが、この本の出発点になっており、宗教的にいっても
ひとりで死ぬのは自然なことで、それほど怖がることではない
というのが氏の主張である。
もともとみんなが望んだというのは、その通りなのだと思う。
それが行き過ぎてしまった、でも昔に戻ることはできない、
今風のつながり方があるのではないか、というのが現在の議論だ。
氏によると、上京して地縁血縁を捨てたところに、
うまく縁をつくるかたちで入り込んできたのが新宗教だという。
新宗教を信仰する信者たちの結びつきは強い。
土日も宗教活動に費やす人もいる。
都市生活の不安を軽減させる要素になっているのだろう。
ひるがえって、そうした組織に所属しない人はどこに縁を
求めたらいいのだろうと考えてしまった。
縁なく生きるのもいいが、私は御免こうむる。
ひとりで死ぬのは避けられないが、
死後何日も発見されない事態は避けたい。
ひとり死はしょうがないが、孤独な人生は嫌だ。
孤独でなければ、ひとりで死んでもすぐに見つけてもらえる。
朽ちていくなら誰もいない山奥か、大海原の上がよい。
でも、現代社会でそれは無理な注文だろうけど。
死んだあと誰かの迷惑になろうと知ったことではないが、
異臭を放つような死に方は避けたい。
そうなると、生き方は決まってくる。
生きているうちは、孤独を避ける人生を送ることだ。
宗教を信仰しようとすまいとこれは変わらない。
当たり前のことを再確認した一冊だった。