『流星ワゴン』

重松清氏の作品を初めて読んだ。
友人から勧められた『流星ワゴン』。
38歳、一児の父親が、「サイテーな現実」から逃げようともがくが、
他人のある交通事故をきっかけに、現実と向き合うようになる物語。


重松清氏は岡山県出身、早稲田大学卒業後、出版社に勤め、
退職後に執筆活動に入るとプロフィールにある。
文庫版のあとがきを読むと、ご本人は女のお子さんが二人とのこと。
重松さん本人ではないが、本書に出てくる主人公は、
多摩のニュータウンに住んでいて、都心まで通勤が1時間半。
作中には強烈な岡山弁を操る主人公の父親も登場する。
なんだかリアル・・・。


というわけで、なんだか自分に似た主人公の話なので、
否応なしにひきつけられていった。
これは三世代の物語なんですね。
主人公・一雄と息子の広樹、一雄の父親の忠雄という構図。
父親の物語といってもいいかもしれない。
どんなに状況がサイテーでも、未来を知っていても、
現実を変えられないむなしさが伝わってくる。
一雄は最初、死んでこのサイテーな現実から逃避したいと思う。
けれども、ある不思議なできごとを経験するうちに、
現実を受け入れ、変えようともがく。
でも結局、現実は変えられない。
すべてが大団円にまとまるなんて、21世紀のお話にしては
チープすぎるからね。
でも、何かが変わっていく。
小さいけれど変わっていく。
結果を引き起こす原因は、「あのときああしていれば」なんて
ピンポイントの出来事なんかじゃなく、日々のなにげない
言動一つひとつの積み重ねなんだということに気づかされる。
やりきれない日々でも、前に進んでいかなければならない
切なさはとても共感できるものがありました。
次の作品も読んでみたいと思わせるのに十分な作品でした。