薄味

出版業界には「ドラマチック」を求めるクセがある。

この世界に20年どっぷり浸かってきて、

自分はそれをあえて避けてきたところがある。

浮き沈みの起伏が大きいほど、物語はおもしろくなる。

シンデレラは、いじめられていたからこそ、

後の王子との出会いがドラマチックになる。

もうそういうのに辟易している。

そもそも「浮き沈み」といったって、

本人の受け取り方次第で、あとでいくらでも平たんになる。

一見、ドラマチックでないストーリーで

いかにジーンと心に残る物語にできる。

それをやるには相当な技術がいる。

著名な料理家が言っていた。

「濃い味付けでおいしくするのは誰でもできる。

薄味でおいしくできるかが料理人の腕の見せ所」

薄味で読ませるには、まだまだ鍛錬が必要だ。