『いちばん大事なこと』

バカの壁』を上梓した直後に出したのが、
養老猛司氏のこの本。
現代人が陥りがちな思考法を指摘している箇所がおもしろい。
たとえば、「ああすれば、こうなる」という思考の図式から
離れられないといったことだ。
人間を含めた自然現象においては、原因はひとつでないことが多く、
だから自然から学ばねばならないということだ。
最近も実感することがあった。
メディアは、90歳代になって、毎日肉を食べて健康で長生きしている
人を取り上げて、「肉を食べると長生きする」といったことを
普遍的な事実のように流布する。
私たちは、それをそのとおり受け取ってしまいがちである。
しかし、その人には毎日、散歩するとか、夜は8時間しっかり眠っている
といった要因があるのかもしれない。
自然も人間の一部だからね。
「別の可能性を考えてみる」ってことが大切なんだけど、
自分の頭で突きつめて考えることはそれなりに疲れることだから、
「ああだから、こうなのね」と短絡志向に転んでしまうのだ。
氏は自然から学ぶには、人工物、つまり人間の意識から発したもので
ないもの、たとえば植物や昆虫などと触れ合うことが重要だと言っている。
私が自然から学びたいと思っていることは、まさにこれなのだ。
自然の中に自ら入っていって、自分で考える頭を養いたい。