笑いすぎな喫茶店のおばちゃん

「ホットコーヒー」と「アイスクリーム」は、「なし」なのか?
仕事で原宿に行った際、合間に時間があったので、
ある喫茶店に入って過ごすことにした。
経費で落としやすくするために、「ホットコーヒー」と「アイスクリーム」を頼んだ。
「ホットとアイス、いや、アイスクリームください」
と言った。ホットとアイス、夢の共演である。
そこで、喫茶店の店主らしきおばさん(おばあさんと言えなくもない)が、
豆鉄砲を食らったような顔で言う。
「は? ホットコーヒーとアイス?」
「ホットとアイス?」
「冷たいのと温かいの?」
「大丈夫?」
「おなか壊すわよ?」
と矢継ぎ早に質問してくる。
「別にいいですよ、それで」
と、こっちは返答するのだが、聞いちゃいない。
「やだーもう、アツいのとツメタいのだって、あはははははははははは」
と、別の客に話しかけて1人で大爆笑している。
「そんなんじゃ、おなか壊しちゃうわよ、ねぇ。あはははははははは」
「あーびっくりした。あははははははは」
笑いが収まったところで、このままではラチがあかないと思ったので、
「じゃあ、アイスコーヒーで」と言った。
すると、今度はまた、「アイスにアイスだって、あははははははは」
と言って笑っている。少々、イラついてきたので、この店を出ようかな
と思っていると、
「じゃあ、コーヒーフロートにしたらいいじゃない」
と余計な提案をしてくる。もうどうでもよくなってきたので、
「じゃあ、それで」と言って、勘弁してもらう。
かなり時間がたってから、コーヒーフロートがやってくる。
「お客さん、かわいいからおまけしちゃったよー、あはははははははは」
と言って、向こうで笑っている。で、こっちにやっと持ってきたかと
思ったら、
「おまけしちゃったわよ、ハーゲンダッツのだから、おいしいわよー」
「ふーん」
うんざりしてぼくは言う。
さっきのおばさんは、また厨房のほうに行って
「コーヒーフロートのアイスクリーム、おまけしちゃったわよ、
あはははははははは。やだーもう」
と言って笑っている。
ある意味、すごいな、と思う。
何が彼女をそこまで笑わせるのか。
早々にコーヒーフロートをやっつけ、会計をする。
「ほらね、650円で済んだでしょ」 余計なことを……。
「たのしそうでいいですね」
会計のときにぼくはそう言ったのだが、相手は「はい、おつりね」と
言ってまったく取り合おうとしない。そこは無視なのだ。
こっちの話をまったく聞いていない。
ある意味、すごいな、と思う。
客商売なのに、そういうことでいいのかと思う。
ところで、「ホットコーヒー」と「アイスクリーム」は「あり」なのか、
「なし」なのか。この喫茶店のおばさんのなかでは「なし」らしいが、
他の喫茶店ではどうなのだろう。
ちょっと別の喫茶店でも試してみようと思っている。