超大盛ペヤングを食す

日本人には二種類の種族がいると言われている。
カップやきそばで「ペヤング」を食べる人種と
「UFO」を食べる種族だ。
私はこれまでずっと「UFO」族であった。
ところが、ある人とのこのような会話で、私の人生は
大きく転換を余儀なくされてしまったのである。
私「ペヤングってまだ食べたことないんだよねー」
 「え、食べたことないんですかー? 美味しいですよ」
私「そうなん? んじゃ、今度一回食べてみるよ」
かくして私はペヤングを食すという暴挙に打って出たのだ。
それからというもの、すっかり私はペヤング
とりこになってしまった。
実にあっさりペヤング陣営に移ってしまった。
ペヤングは、そのネーミングは、「ヤングなペアに食べて
もらいたいから」(ホント)ということらしいが、
その名のとおりのペヤング生活を送っている私のところに、
寝耳に水の朗報が飛び込んできた。
ペヤングには通常バージョンのペヤング(麺90グラム)
の他に、ミニ(40グラム)、大盛り(130グラム)が
あったが、このほど「超大盛」が開発されたというのである。
麺はなんと180グラム! 普通盛の二倍だ。
これは特筆すべき事件だった。
私はさっそくこの超大盛バージョンを買い求めるべく、
コンビニに出向いた。
こみ上げる衝動を抑え切れなかったのだ。
封を開けてみた。
中はいったいどんなことになっているのか!?
なんのことはない。
カップの中身は普通盛バージョンの麺が
横並びに二つ鎮座していた。
なんという安直な考え!
チキンラーメン」は苦労した末にやっと麺に卵を載せる
くぼみをつけることに成功した。これには日清も巨額の開発費を
投じたという(ウソ)。
だが、ペヤング陣営はそれを許さなかったのだ。
こんな開発では、『プロジェクトX』は3分で終わってしまう。
――開発担当の山田は悩んでいた。どうすれば、開発費をかけずに
「超大盛」を開発することができるのか。疲れ果てて帰宅した山田に
身重の妻のさと子がつぶやいた。
「そんなの普通盛の麺を二個入れとけばいんじゃなーの」
「そうか、その手があったか、なぜ今まで気づかなかったんだ!」
――山田はさっそく試作に取り掛かった。そして、実にあっさり
「超大盛」が完成した。
……やりだすといつまでも続くので、これぐらいにしておくが、
とにかく、こうした開発秘話があったに違いない。
ペヤングをつくっているのは、まるか食品群馬県伊勢崎市)
という会社で、ペヤングは東日本でしか売っていない。
西日本で生誕した私が、全国展開している「UFO」陣営に
いたのも無理からぬことだったのだ。
帰省したときには、いくつかお土産に買って帰ろうかと
思っている。