大人の役目 

東京五輪の観戦をするはずだった子どもたちの機会が

まったくなくなってしまった。

いうまでもなく、無観客が決定したからだ。

もう本当に残念なことである。

「スポーツに興味がないのに連れて行ってもしょうがない」

という人がいるか本当にそうだろうか?

だったら、なぜ、社会科見学で工場に行ったり、

博物館や科学館に行ったり、開校記念日に演奏家を招いたり、

劇団を招いたりして、観たり聴いたりするのだろうか。

何に興味がわくかわからないから、いろんなものに

接する機会をつくってあげるのが大人の役目ではないのか。

私はこれまでライターとして、数百人の人に取材してきたが、

一流になる人がその分野に出合うのは本当に偶然だ。

家から近かったからとか、きょうだいがやっていたとか、

その人がそれと出合わなかったら一流になれなかった。

偶然だ。

その偶然を起こしてやるのが大人の役目ではないのか。

人生は何がきっかけになるかわからない。

何がきっかけになっても、夢中になれるものが見つかるほうが大事だ。

偶然出合ったことで自信がついて、他のことがうまくいったりもする。

子どもたちがまだ出合ったことのない世界を

チラ見させてあげないといけない。

大半の子どもが興味を持たないだろう。

だが、それでいい。

たくさん経験するなかから何かひとつでもヒントが

見つかればいいのだから。

何でも中止して責任逃れする大人にだけはなるまいと

いま改めて思う。