脱獄みたいなもの 

フリーランスになるというのは、下水管を通って脱獄するようなもの。

私が15年間の会社勤務の末にフリーになったときにその感覚を覚えた。

取材だったか、打ち合わせが終わって、天気のよい午後。

「これからどうしよう」と考えたとき、

「別に映画を見に行ったって、ビール飲んだっていんだよな」

と考えて、銀座の交差点で思い切り腕を伸ばして伸びをしたくなった。

映画『ショーシャンクの空に』で下水管を通って外界に出て、

雨に打たれる主人公のような気持ちだった。

(牢獄ほど会社はイヤなものではなく、居心地はすごくよかったにも

かかわらず、そんな感じが得られたことは驚きだった)

あの場面は、自由を得たということと、汚物だらけの体を

雨が洗い流してくれるという2つの開放感が表現されていた。

私の場合は、時間的な自由を得たことと、雇用という束縛からの

開放という2つの開放感があった。

あの主人公も出たら出たで先を見たら不安があっただろうから

それも私は同じだった。

会社内での評価はなくなり、裸の私が評価されることになった。

一度リセットして、新たに始められるのは

何にしても気持ちがいいものだ。