「アメリカン・スナイパー」

クリント・イーストウッド監督の映画は好きで、よく見ている。
今回は9.11後のイラクでのアメリカの戦いを描く。
主人公は実在した?伝説?のスナイパー、クリス・カイルで、
実話をもとにした映画である。
まだ公開したばかりなので、ネタバレは最小限にとどめておこう。
率直な感想は、映画として大変よくまとまっていて、
2時半がまったく長く感じない。これは映画にとって大事な要素。
それだけおもしろいということなのだけど、この映画はそれだけではない。
ラストは英雄の死が描かれて、無音のエンドロールが流れて終わる。
葬儀のシーンで軍人が吹くラッパ。
そのラッパが吹く曲でエンドロールを流していたら、
これは間違いなく、英雄物語と言っていい映画だと思うが、そうではない。
なぜ音楽に造詣の深いイーストウッドが無音でエンドロールを流したか。
遺族にとっては主人公は英雄以外の何者でもない。
でも、遺族でない私たちは別のことも考える必要がある。
「あなたはこの映画をどう受け取るか?」
無音のエンドロールは監督からのメッセージに思えた。
戦争で人がどんな影響を受けるのかがこの映画のひとつのテーマ。
主人公は戦場から離れても心的ストレスに苦しむ。
これは今までにもよく語られてきたこと。
「戦争で影響を受けない人はいない」と劇中の人物は言う。
イラクの人々も多く死に、アメリカ兵も多く死ぬ。
誰も得しない。
いや、誰かが得をしているのだよね、実際。
それは、自分は安全なところにいて、「国家の危機」を叫ぶ人たちであり、
武器をつくったり、産油地の利権でお金をもうけたりしている人たちだ。
戦争で普通の人たちがどんな影響を受けるか。
それはアメリカだけでなく、イラクの人のことでもある。
ISISの問題が大きくなる今だからこそ、ぜひ見たい映画です。