法律の原型は、村社会の掟にある。
村の中で従わなければならない暗黙のルール、不文律だ。
農耕社会では、集落が存続していくためには共同作業が必要だった。
だいたい同じ時期に田植えや稲刈りをしないと、収穫量が落ちる。
藁ぶき屋根をふきかえるのに一人では無理だった。
それによって自然発生的に生まれたのが「結い」だった。
結いとは共同作業を意味する。
神奈川県の由比ガ浜は、地引網漁を共同作業で行っていたから、
この名がついたといわれている。
共同作業に参加しないものが多数出てくると、集落の存続が
危うくなってくる。
そのため、「村の掟」を定めて、突出するものが出ないようにした。
そして掟を破ったものは、村八分にすることにした。
火事と葬儀(これが残りの二分)以外の交流を絶つことにしたわけだ。
火事では他の家屋に延焼が広がるし、遺体の処理をちゃんと行わないと
疫病が流行してしまうからだろう。
この「村八分」が制裁として機能していたから、
村の秩序が保たれた。
この制裁はヨーロッパより強く機能した。
なぜなら島国の日本は、所属する集落が気に入らなかったとしても、
海を渡って気安く国外に行くことができなかったからだ。