ネロの死は避けられたか?

こんな話だったのか、フランダースの犬って。
というか、犬の話じゃないような。
東京MXの昔のアニメ番組をやっているので、
フラダースの犬を見たことは前にも述べた。
意外にも奥の深い話であった。
前回は、ネロの仕事が減ったところまで書いたが、
物語はあの有名な死の場面まで一気に進む。
ネロは減った仕事の穴埋めをするべく、波止場での仕事に就く。
その後、ネロの住む村で、風車小屋が焼ける事件が起きる。
放火犯として村八分にされるネロ。
そして、牛乳配達の仕事もなくなり、いよいよ追いつめられる。
部屋の家賃も払えなくなり、捲土重来を期して、絵画コンクールに
応募する。しかし、おしくも落選し、悲観したネロは
あてもなくさまよい、ルーベンスの絵を見るためにアントワープ
大聖堂まで行き、そこで息絶える。
四面楚歌だったように見えるネロにも、援助してくれる人がいた。
ノエルおじさんという人で、おじいさんと何らかのつながりがあった
人らしく、森に住んでいる。
おじいさんが亡くなったあと、ノエルおじさんは2度、ネロを迎えに来る。
一度目はおじいさんが亡くなった直後、
二度目はクリスマス3週間前である。
しかし、ネロは、一度目は「おじいさんの絵をここで描きたい」、
二度目は「クリスマスにコンクールの発表があるから、
それまで待ってほしい」といって、二度とも断るのである。
しかも二度目のときには、3週間までの間の食料費としてお金を
受け取るが、絵画みたさに絵画展の入場料としてお金を使ってしまう。
これらの申し出を断っていなかったら、
ネロは後に絵で大成したかもしれないのに、と思ってしまう。
ネロの心情を思うに、なにか成し遂げてからノエルおじさんの
ところに行きたかったのだろう。
自分の人生は自分で切り開くという、決意を宿していた。
人の世話になることをよしとしなかった。
幼くして自活せざるをえなかったネロは、不遇の人生を
強烈なプライドで乗り切ってきたわけだった。
ネロは9歳で身寄りがいなくなる。
「世話になったらよかったのに」と私たちは思うが、
そんなやわな精神ならとっくに心折れていただろう。
9歳でも雄々しく生きた背景には、自分の名誉のためなら死をも
いとわない強烈な自尊心があったのだ。
食べるものもなくなり、力尽きる寸前のネロとパトラッシュは
道で大金を拾う。それは親友・アロアの父親が落とした金だった。
ネロはアロアの自宅に金を届け、フラフラと立ち去る。
どこまでもやさしく、誠実なのである。
やさしく、誠実で、自分の名誉を重んじる。
まさに日本人が理想とする人間像だった。
欧州では「負け犬の死」としか受け取られず、
日本人だけに人気があるという。
子どもにもぜひ見せたい作品です。