割り箸が日本の森を守る?!

岡山県美咲町に住んでいた祖母が遺してくれたお金を使って
岡山県西粟倉村で展開されている共有の森ファンドに
1口5万円だけ出資している。
この事業を手掛けるトビムシという会社が、今度はワリバシファンド
なるものを使って、間伐材の需要を掘り起こそうとするプロジェクトを
立ち上げている。
2月20日放送のNHKBS1『地球ドキュメント MISSION』で
その奮闘ぶりが報告されていた。
本の森から切り出された間伐材を使ったワリバシを使うと
本の森が元気になる、とアピールしている。
実際にワリバシの製造も手掛け、販路も自分たちで開拓している。
「ワリバシなんか中国に勝てるわけない」という人がいるだろう。
その通りで、ワリバシプロジェクトの割り箸のコストが一膳2.5円で、
中国産の一膳1円と比べて見劣りする。
だが、外食チェーンではプラスチック箸には洗浄、消毒に手間がかかる
ことから、一膳2・5円なら太刀打ちできる価格だという。
それに、理念を共有できる人に使ってもらいたいともいう。
この放送の中で、「なぜ日本の間伐材を使うことが日本の森を守ることに
なるのかを説明し、理解してもらうことが必要」という難題があった。
問題の核心はここにある。
地球温暖化などの環境問題、エコ意識といったものは、
地球規模で語られることが多く、
「使い捨てはすべて悪」の考えを持った人は多い。
こういう人に「使い捨ての割り箸を使うことが日本の森を守る」という
ことを説明して理解してもらい、さらに使ってもらうことは
並大抵のこととではない。
極めてハードルが高いことを彼らはやっている。
じゃあ、なぜ間伐材を使うべきなのか。
世界的にみれば森林は伐採しないでおくことがいいとされているが、
日本とは事情が違う。
日本は戦後の復興期に住宅用建材の需要が急拡大したため、
スギ、ヒノキといった針葉樹を大量に植林した。
(そのせいで多くの人が花粉症に苦しんでいる、ということになっている)
それが数十年経って伐採の時期にさしかかっているのだが、
経済成長期に間に合わなかったため、外国の木材が輸入されるようになり、その安い外材に、日本の木材が価格で勝てなくなった。
いうまでもなく、日本では人件費が高いからだ。
(その他にもいろいろ理由はある)
そもそも木材として使えるようになるには、たくさん植えて、ある程度
育ったら間引く作業をしなければならない。その間引く作業が間伐で、
さらには枝打ちという、材木の節をなくすための作業も必要になる。
間引かないでそのまま放っておくと、ひょろひょろの木ばかりになり、
木は太く育たないし、風雪害を受けやすくなる。
木が密集したままだと地面に光が差さないので植物が育たない。
すると、表面の土が流れやすくなる。植物が豊かに育たない森は、
降った雨をとどめておくことができず、すぐに流してしまう。
結果、河川の氾濫も起こってくる。
これらを防ぐために間伐が必要なのだ。
このように縷々説明したことを理解してもらうのは大変難しい。
私たちの興味関心の範囲は、それほど大きくならない。
自分の家が災害で流されないと自然環境に思いがいたらない。
それが悪いというのではなく、それが人間の自然な姿なのだ。
間伐材を使うことで森が元気になることを説明し、それが引いては
安全な住環境をつくるのだということを学校で教えない限り、
社会に周知していくことは途方もない作業である。
ワリバシプロジェクトはそういう途方もない困難な事業なのだ。
私たちは毎日使うワリバシについて深い考えをもっていない。
でも、こうしたことを知れば、何が大事なことか気づかされる。
何もファンドに投資することだけが行動ではない。
国産の間伐材のワリバシを使うのか、プラスチック箸を使うのか、
その選択一つひとつで自分の考え方を、社会に反映していくことができる。
「未来は私たちの消費行動にかかっている」ということを
改めて気づかせてくれる大変意義深い番組だった。
(参考サイト「森林・林業学習館http://www.shinrin-ringyou.com/