映画「奇跡のリンゴ」

映画「奇跡のリンゴ」は、もともとNHKの番組が話題になり、
それを書籍にしたものが大変売れた。
ドキュメンタリー番組と映画と本というのは、
まったく別物なのだなという気がした。
というのも、本で書かれていた、リンゴの無農薬栽培を
実現するそのメカニズムが、映画ではきちんと描かれず、
奇跡のリンゴ」をつくった木村さんの苦労に比重が
置かれていたからだ。
そこは逃げずにちゃんと描いてほしかったなという気がする。
カニズムが説明されなかったので、安易な苦労話になって
しまっている気がした。
本では、リンゴの木が農薬に頼ってしまったばっかりに
本来の植物が持つ強さが消されてしまっていたことに考えがいたり、
野性味あふれるリンゴの木を育てようと、土壌を改良しようとする
ところを丹念に書いている。
それによって木村さんは、植物が本来持つ強さに思い至り、
人間が育てるのではなく、植物が育っていくのを少し手助けする
だけでいいのだという、人生観ともいえる発見をするところが
もっとも重要なテーマだったと思う。
それが一切描かれていなかった。
自然のもつ力の偉大さに触れ、人間が植物を
仕立て上げているのだという傲慢さに思い至らせることが
できなかったかと思う。
こういう映画を見ると、なんだか馬鹿にされているように感じる。
「こういう苦労話が結局、好きなんでしょ」
「植物のメカニズムなんて難しい話わかんないでしょ」
といわれているような気がするからだ。
素材はいいのに、なんだかもったいない映画だなあと思った。