山田洋二監督の時代劇三部作の一つである。
他の二作品、真田広之主演「たそがれ清兵衛」、
木村拓哉主演「武士の一分」も観た。
「隠し剣 鬼の爪」は永瀬正敏主演で、松たか子が相手役。
三つの作品に共通しているのは、夫婦愛と武士の魂、心です。
下級武士の悲哀みたいなのが多いんだけど、
その中でもみんな剣の達人なんですよね。
今回の作品も、江戸時代の平和なときの話だから
剣がうまくても出世できない、
そこに悪い上司が出てきて、出世とかをちらつかせて
武士の本分にもとる行動を取らせようとする。
でも主人公のサムライは武士の魂だけは売らない、
そんな映画だったように思います。
こういう世界観は好きだなあ。
私、お城が好きで50や60はお城を訪問したと思いますが、
城を舞台にした大掛かりな時代劇や、ド派手に戦のシーンを
CGでつくっちゃう映画よりはこっちのほうが好きです。
要は人間ドラマが好きなのですね。
「隠し剣」では武士と、百姓の娘との身分違いの恋が
描かれる。そんななか、武士の魂を試される場面が来る。
「じゃあ、サムライって何よ」
そういう気持ちが主人公の中に出てくる。
葛藤する。迷いながらも決断する。
そこに人間臭さが出てくる。よかったですねえ。
人間臭さが描かれている映画がおもしろいと思うのです。
人間って誰しも合理的な判断ばかりできるわけではないですよね。
自分の中で矛盾していることが多々ある。
でもその矛盾を自分でもわかっているけど
どうしようもないことがある。
映画の主人公はそれでも物語を前に進めなきゃいけない。
彼らは逃げられないんですよね。
生き方の参考になる映画をこれからも観てみたい。