説明が多い世の中

風立ちぬ」を見てから、評論家の批評を
2,3聞いたり読んだりした。
その中にこういう話があった。
「最近の日本映画は登場人物が全部気持ちを言う。
説明的なセリフが多いが、風立ちぬはそうではない」
私がほかのライター仲間から聞いた、
「いまは全部説明するように編集者から求められる」
という話と、
歌舞伎役者が言っていた
「いまの芝居は説明セリフが多すぎる」
という話と、
「いまの日本映画は説明的なセリフが多すぎる」
という話は全部同じだと思った。
本も芝居も映画も、説明しすぎる。
これはいまの世の中が忙しくなりすぎたせいなのだろうか。
昔はじっくり味わい、考える時間の余裕があった。
でもいまは忙しくて、本や芝居や映画をじっくり味わう
時間がないのだろうか。
説明されると確かにわかりやすい。
感情移入もしやすい。
でも、そのあとに何も残らない。
あとで読み返してみたい本、何度も見る映画は、説明が少ない。
だから、あれはこういうことか、これはああいうことか
と考えながら鑑賞する。
説明されると、一見、親切なように思えるが、
自分の頭で考えることがないし、
自分で感じようとする気が起こらない。
何より解釈に幅がないからつまらない。
わかりやすいものを読んだり見たりするのも必要だけど、
たまにはわけのわからないもの、難解なもの、不親切なものを
読んだり見たりしたほうがいいと思う。