理解力が落ちている

ある歌舞伎役者が言っていたのだけど、
いまの歌舞伎って、「説明セリフ」が多いんだってね。
役者がぜんぶセリフにして、状況を説明していく。
わかりやすくするためにね。
これって、出版業界のことを言っているのかと思った。
まったく同じ事が本についてもいえる。
懇切丁寧に、手取り足取り、説明するように
編集者から指示を受けることがある。
読解力、理解力が落ちているというのだ。
原因を考えてみた。
私も読解力が落ちているひとりだと思うのだが、
いろんな情報が頭のなかにあるばかりに、
いろんな受け取り方の選択肢が出てきてしまう。
そのため、素直に受け取れなくなってしまうことがある。
だから、発信するほうは「これはこういうことで、
これはこういうことだから、違うふうにとらないでね」
という意味で全部、説明しようとする。
情報が多すぎるために、読解力が落ちているんじゃないか。
余計な先入観が多いと、本でも映画でも演劇でも楽しめない。
先入観を捨てるには、「これを読んだり、観たりしたら、
仕事や家庭生活に生かせるかな」なんてことを意識しないで
いることだ。
頭をからっぽにして、それだけに集中する。
何かの役に立ったなら、それはそれでもうけもん
というぐらいに考えてみることだ。