「最初にナマコを食べた奴」

ナマコを見て、
「これを最初に食ったやつはえらいよな〜」
っていう人がいますよね。
私は思うんですよ。
たぶん、その最初にナマコを食べた人って、どうにも空腹で
何か食べるものはないか探した末の選択だったんではないかと。
肉や魚、卵や豆が食べられるのに、
「よっしゃ、俺は勇気を出して、このナマコを食べてみるぜ」
って食ったんじゃないんじゃないかと思うんです。
私たちは、飢餓ってものを経験したことがないんですね。
もう生まれたときから飽食なわけです。
その飽食の状態の人が、死ぬかもしれないものを食べてみようとは
冒険家でないかぎりしないわけですよ。
でも、本当に餓死しそうになったら、何でも食べると思うんですね。
たぶん、そのへんにはえてる草も食べるはずなんですね。
そういう状況で、ナマコが食べられて、
「ああ、なんとか死なないですみそうだ」となって、
「それになんだか、おいしいよ」ってことになったんじゃないのかな。
結局、想像力がないんですね。
あとひとつ考えられるのは、人類が、400万年ぐらい前の原始人たちが
登場する前の段階の生物だったころから、ナマコを食べていたという説。
食べたり食べられたりするなかから、ナマコはずっと食べられてきた。
それは案外うまかったからでしょう。
どっちにしても、
「おれはナマコを食べなくても死なないけど、
食文化を広げるために、ちょっと食ってみたよ」
ということではないと思います。
そういう私はまだナマコを食べたことがないのですが。