日本の歌の良さを想う

コンサートを聴きにいった。
幼馴染の同級生のオペラ歌手だ。
友人にオペラ歌手が2人もいるなんて、自分がびっくりしている。
SNSで東京に住んでいることを知って、ポツンポツンと
連絡を取り合うようになってから何度か誘われていたのだが、
諸事情で行けず、今回が彼女の歌を聴くのは初めてだった。
オッフェンバックは名前だけは聞いたことがあるが、ロッシーニベッリーニ
名前すら聞いたことがなかった。
他に小林秀雄などの日本歌曲なども歌ってくれたが、
恥ずかしながら、批評家の小林秀雄しか知らなかった私は、
共演したピアニストのショパン「革命」以外はすべて初めて聴いた。
オペラについて知識もなく、技術的なこともまったくわからないものにとっての
歌は子供にとっての子守歌と同様に、心地よくてリラックスできるものだ。
特に「落葉松」(小林秀雄)は、情感たっぷりに聴かせる歌で、
日本の歌の良さを感じた。
落葉松(カラマツ)は針葉樹には珍しく落葉する。
秋に落葉するのを、歌詞の中の「私が流す涙」の隠喩として用いているのだ。
こういうのがいいと思えるのは、日本人なんだなあというのと同時に
「年とったんだなあ」という感想を抱かせるのにも十分だった。
歌手の圧倒的なパワーを全身に波動のように受けて、
体液が躍動するような感覚に襲われた。
ここから先が「感動」ということになるのだろうな。
この日は別の歌手の演奏も含め14曲、1時間程度の内容だった。
歌うほうは大変だっただろうが、私にとってはちょうどよいボリュームで、
心地よく家路につくことができた。
彼女の今後の活躍を期待したいと思う。