戦場のアリア

まったく期待していなかったが、これはよかった。
第一次世界大戦中、フランス・スコットランド連合軍と、
ドイツ軍がフランス地域で戦争を繰り広げていた。
クリスマスの夜、ドイツ陣営からオペラ歌手の歌声が戦場に響き渡る。
それにあわせてスコットランドの陣営から楽器が演奏される。
これをきっかけに、一夜限りの休戦が実現するというお話。
ついさっきまで殺しあって人たちが、互いに酒を酌み交わすのを
見ていると、「こんなのありえないんですけど」と思ったのだが、
実話を元にしたということを知って心底驚いた。
打ち解ける様がやりすぎな感じはしたけれど、
こういうこともあるのかもしれないと思ったりした。
戦争中は躊躇なく目の前の相手を殺せるように、相手の人間は
極悪非道で、人にあらずと兵士たちは教育される。
ところが、実際に触れ合ってみると、親や恋人がいたりして、
同じように戦地に借り出されて、
嫌な人殺しをやらされていると感じている。
硫黄島からの手紙』でもテーマになったが、
この映画も同じようなところがある。
もちろん、心情的に敵兵と交流できない兵士もいたりして、
それがこの映画を深いものにしている。
劇中にフランス軍の指揮官が言う。
「上のものがなんと言おうと、私の戦争はあの塹壕だ」
現場の悲哀みたいなものが伝わってくる。
すばらしかったのは、オペラ歌手の歌うアリアだった。
シンとした夜の雪景色に響く女性の歌声が
なんともすばらしく、それだけでも見たかいがあった。
クリスマス、音楽、ミサという、欧州の人々の共通項が
このクリスマス休戦を可能にした。
共有し、共感することで、親近感を得ることができる。
これは十分に平和へのヒントになる。
もっと話題になっていい映画だと思う。