『製造業が日本を滅ぼす』

高名な経済評論家であり、一橋大学名誉教授でもある
野口悠紀雄氏の著作。
製造業を基幹産業として現在を気づいた日本としては
到底受け入れられない、刺激的なタイトルである。
産業構造の根本的な転換を訴えている。
製造業はなんにせよいつかはコモデティ化(汎用化)され、
低価格競争になるに決まっており、金融やITなど先端産業へと
舵を切るしか今の日本人の高給を維持する道はないということ。
すぐに全ての製造業をなくしてしまうことは現実的で
ないことをわかりながら、あえて厳しいことを提言していると
見るべきで、著者の製造業への愛あってのことだろう。
この20年で、日本は中国の台頭もあって、
高付加価値商品を製造することによって生き残ろうとしてきた。
ちょうど、GEが白もの家電から、高額で高精度な医療機器へ
方向転換していったように。
だが、DVD・HDレコーダーやテレビにおいても
韓国・台湾勢に押され、もはや勝負がついたといってもいいほどだ。
製造業が生き残る道は、これまで行なってきたビジネスモデルの転換を
さらに進めて、世界でつくって世界で売る企業になるしかない。
アップルのように、コンセプトと基本設計だけを開発し、
海外でつくって世界中に売る。
日本全体としてみれば、製造業から金融・製薬・ITの方面に
労働力を振り向けていくということ。
時代の流れとはいえ、大手メーカーが万単位の人員整理をすると
聞けばさみしくなるが、生活レベルを維持しようとするなら、
変化への対応は仕方ない。
読みながら、暗い気持ちになった一冊だった。