死闘に感涙

心が動かされるのは、負ければ明日のない戦いに必死で
取り組む姿がまぶしいからだろう。
ベスト8進出がかかった大一番で、サッカー日本代表は最後まで
勝ちきれなかった。
実力伯仲の相手との勝負は時の運で、勝つこともあれば負けることもある。
そんなに簡単に強豪国の仲間に入れるわけがない。
もう本当に最後の一滴まで汗を搾り出しての死闘だった。
スポーツには、実力を構成するピラミッドがある。
まず土台に基礎体力、その上に基礎技術、そしてその上に専門体力、
専門技術があり、さらに戦略、戦術が積み重なって「総合力」となる。
日本チームは、専門体力、専門技術においてブラジル、スペイン、
ドイツ、オランダといった強豪国にやや見劣りするぶん、
戦略と戦術において優れ、互角に戦った。
戦略とは、「チームのどの長所を生かして勝つか」であり、
戦術とは、ゲーム内でのポジショニングやボールの動かし方など
の細かい作戦をいう。
日本チームは、当初の攻撃サッカーから、組織を生かした守備を
ベースとして戦うという戦略に変更し、それが功を奏した。
戦術においても、まずはしっかり守って少ないチャンスを
ものにするという意思統一のもとに戦った。
どこかが弱くても、どこかを補うことで、勝つチャンスはあるという
弱者の戦略で、誰もが思ってもみなかった結果を手にした。


そして、もう1つの強みはなんといってもチームワークだった。
最後にPKをはずした選手の肩をみんなが抱いていた。
本気で勝ちたかったからこそ、そうなる。
団体競技をやったことのある人なら、はずした選手の気持ちも、
その選手の肩を抱く気持ちもわかると思う。
やっぱりチームスポーツっていい。


ゲーム後の選手たちの様子を見ると、
以前見られたような「よくやったじゃんオレたち」的な雰囲気は
微塵もなかった。やっと世界で戦うメンタリティーを得たのだ。
今後は世界の強豪国らの日本チームを見る目も変わってくる。
これからが本当の意味で世界との戦いのはじまりだ。