「そこらへんのサラリーマン」になりたくない若者

ある著名な精神科医が今の若者は「何者かになれないと
人生は無意味だと感じているのではないか」と新聞に
書いているのを読んで、ハッとした。
友人と飲んだとき、その友人の後輩(24歳の男性)が、
「俺はそこらへんのサラリーマンみたいになりたくないんです」
と豪語したという話を思い出したからだ。
今の20代、30代は周囲にIT企業などで起業している人もいて、
サラリーマンとして働くことが落伍者のような印象を受けるのだろう。
そういう考えの人はサラリーマンをしながら、
「俺はいつかはやる。今は仮にサラリーマンをしているだけ」
と思っているのだろう。
彼がどういう意味で「そこらへんのサラリーマン」と言っているのか
詳しいことはわからない。
でも、「そこらへんのサラリーマン」を馬鹿にしているニュアンスは
伝わってくる。でもね、
「そこらへんのサラリーマン」こそが世の中を動かしているんですよ。
みんな起業家ばっかりじゃないでしょう。
確かに昔の大企業の社長さんは創業者だったでしょう。
高度成長期に会社を大きくしてきた人たちです。
でも、あれから30年、40年とたった今、大企業の社長は
サラリーマンの時代からコツコツやってきた人になりました。
トヨタの社長だって、ソニーの社長だって、みんな昔は
「そこらへんのサラリーマン」だったのです。
で、社長になれなかった人たちもいっぱい素晴らしい人がいる。
彼らは決して落伍者なんかではない。
以前、「私は一介のサラリーマン。ただの歯車ですから」と
自分を卑下しながら言う人がいたので、私は怒ってこう言った。
「歯車があるから機械が動くんじゃないですか。
私は歯車をつくる会社の取材をしたことがあります。
彼らがすぐれた歯車をつくるのにどれだけ努力しているか
知っていますか。歯車を馬鹿にしないでください」
その会社は極小の歯車をつくることにかけては世界一です。
「歯車づくりなんて……」ってウジウジしてたら、
世界一のものづくりはできなかったでしょう。
「何者かになれなくても人生は無意味じゃない」
と言ってくれる人が周りにいる人は幸運です。
そういう人の声に耳を傾けたいものです。