ハンコとサラリーマン

サラリーマンにとって、ハンコはどういう意味をもつのだろう。
こういう話を聞いた。
ある課長の話。
まわってくる書類には、ハンコの欄がふたつある。
ひとつは課長印、もうひとつは部長印である。
その四角の中に、承認しましたよ、というハンコを押す。
でも、課長のハンコなんて、部長のハンコの前では
ほとんど意味をなさないのだという。
なぜなら、部長がハンコを押したのに、
課長である自分が押さないわけにいかないというのだ。
「そういうときは、インクをにじませるんだよ」
と、その課長は先輩から教えられたという。
インクをにじませることで、せめてもの不同意の証とするのだ。
そういうのにじっと耐えて、課長をやっているのって、
けっこうぼくはかっこいいと思ってしまう。
サラリーマン世界ではいいたいこともいえない。
いや、それはどの世界だって同じ。
でも、そういう環境の中で、なんとかして自分を失わずに
仕事をしようと、日々もがいているのだろう。
「課長 島耕作」はついに社長になったけど、
こういう泥臭い話がおもしろいと思うのです。