天袋女

最近、「醤油男」「包丁男」など、「○○男」なんてのが多すぎる。
安易だ、けしからん。
でも、ぼくも使っちゃった。


28日、私のアンテナにひっかかる記事が西日本新聞に掲載された。
「知らない女が天袋に住んでいた」という例の事件である。
ことの顛末はこうだ。


福岡県のある57歳独り暮らしの男性宅に不法侵入していた、
58歳の女性を逮捕した。
男性は家の冷蔵庫からたびたび食べ物がなくなることを不振に思い、
部屋にカメラを設置。映っていた女はかけつけた警察官に御用となった。
女は「住むところがなかった」と話している。
以前にもこの家に盗みに入っていたことがあり、気に入ったからという。


私はこういうニュースが大好きなのである。
天袋とは、押入れの上にある「ちっちゃい物入れ」である。
天井までの高さは50センチ。さぞ窮屈であったろうと思うのは甘い。
自宅に天袋がある人は確認してみるといいが、
天井は低くても、奥行きは押入れと同じくらいけっこうなスペースがある。
おそらく、食う寝るはもちろん、排泄も全部天袋で済ませたのだろう。


これと同じような話をいくつか知っている。
今は解散したお笑いコンビ「ロッコツマニア」の宿輪竜一さんの話。


彼が小学校低学年のころ、お父さんの実家ではお父さんの弟、
つまり叔父さんが行方不明になって3年半が経っていた。
そのころ、お父さんの実家には開かずの扉があった。
そこは誰も開けてはいけないことになっていた。
夏休みで父の実家に訪れたある夜、
宿輪少年はトイレに起きだし(だったかな)、
開かずの扉から出てくる人影を見たのである。
暗闇の中で月明かりに照らされるその人影。
宿輪少年を認めたその「人影」がこちらに歩み寄ってくる。
そして、宿輪少年にこういう。


「このことは家に人にいっちゃいけないよ。絶対だよ」


恐ろしくなった少年は、自宅に帰っても父にそのことを話す気には
とうていなれなかった。


「あの人はいったい誰なのか」――。


そうしてしばらく経ったとき、宿輪少年の家に一本の電話があった。
父の実家の祖母からだった。電話口に立つ父。
そして、一言、


「弟が見つかった」


そう、月明かりで宿輪少年が会ったのは、彼の叔父さんだったのである。
家族に知られずに3年半もの間、開かずの部屋で隠遁生活を送っていた
というのである。


これは宿輪さんが語っていたことなので、真偽のほどは定かではない。
もしかしたら、まったくのつくり話かもしれない。
ただ、かなりリアルだったので、真実かもしれない。
世の中にはこういう話があるのである。
あなたのうちの屋根裏にも誰かが住んでいたりして――。