金がないTV

HDレコーダーを買ったので、なんか録画する番組はないか
と見ていたら、「金がないテレビ」というのが目にとまった。
正式タイトルは「YOUのとにかく金がないTV」という。
テレビ東京らしい正直なネーミングが気に入った。
金がないため、高額なタレントのブッキングはできず、
タレントのYOUが移動中の車内で、スタッフが録ってきた映像に
ついてお座なりにコメントするという、投げやりな構成を取っている。
今回のテーマは、「こんばんは、森進一です」を最初にやったのは
誰かという、本当にどうでもいいものであった。
断っておくが、こういう下らない番組は、私は大好きである。
スタッフは、最初モノマネの大御所に話を聞きにいく。
さんざん過去の栄光を語るおしゃべりとカラオケにつきあわされた
挙句、何も聞き出せないまま徒労に終わる。
次に、モノマネ草創期のベテラン芸人が3人浮上する。
3人ともが元祖は自分であると主張して譲らないのだ。
そこで、スタッフは3人を一堂に会して、真相を突き止めようとする。
しかし、A氏だけがスケジュールの都合が合わないということで、
B氏とC氏が直接対決することになった。
B氏とC氏は旧知の仲らしく、どちらも元祖は自分であると主張し、
「元祖というのは一人で決められないのだ」という。
理由は、両氏のデビューは一年違いであり、森進一のモノマネは
同時多発的に生まれたものだから、というものであった。
そこで、スタッフはA氏を持ち出す。
A氏もほとんど同じころにデビューしており、同時多発をいうなら、
この人も元祖の一人として加えていいのではないか、というのだ。
でも、B,C氏は、「それは違う」というのである。
どうも欠席裁判のような様相を呈してきた。
私は笑った。あまりにも都合のいい、二人の論理が笑えた。
ハッキリいって、ずるいっ!
結局、結論としてB,C氏が元祖ということになった。
最後、スタッフはA氏に連絡を取る。
A氏「それは違います。元祖は私です。うんぬんかんぬん」
と、音声はフェードアウトしていく。
最終的にスタッフはYOUに説明する。
「Aさんはいつも直前で都合が悪くなるんですよね」
苦笑いするYOU――。
という感じで番組は終わる。
いや、シュールだ。
こういうモノマネタレントたちの都合の良さ、
少しでも営業に生かそうとする根性を、
番組スタッフが冷ややかにみているのが伝わってくる。
そういうのがジワッと笑いを生み出している。


あるオンライン証券社長が会社設立のころのことをこう述懐していた。
「お金とか時間がないから、アイデアが生まれる。
そんなものが最初から潤沢にあったら、工夫しようなんて思わない。
最初に苦労したから今があるんです」
適当にお笑いタレントを配して、クイズ番組をつくったり、
勤務中に株の取引をしていたどこぞのテレビ局関係者に聞かせたい。


「YOUのとにかく金がないTV」の関係者のみなさんには
これからも下らなくておもしろいものをつくってほしい。