カツ丼の食べ方

私は、毎日新聞で連載されている4コマ漫画の作者である
東海林さだおさんが大好きなのだが、先日、カツ丼の話題を
ブログに書いていて思い出した話がひとつ。
氏は食べ物などのエッセイも得意で、下手するとそっちのほうが
漫画より評価が高かったりするほどの人なんです。
彼はカツ丼を食べるとき、
とんかつを一切れ取り出し、ほかのとんかつの上に
「一時避難」させておくという。そうすることで、
「最後にご飯だけが残るという不測の事態を回避できるのである」
と書いている。
これを読んだとき、「そう、まさにそう!」と膝を叩いた。
私の場合、一番端の一切れは普通に食べ、二切れ目を「避難」させる。
そして、ご飯を食べるときは、荒波が長い時間をかけて
崖を侵食させていくようにして食べる。
カツ丼の側面を掘るようにしてご飯を食べていくのである。
こうすることで、氏曰くの「不測の事態」を回避するわけである。
氏はカレーライスについても同じことを言っている。
「ラーメンでは、あれだけ店主が情熱を注いでつくったスープを
惜しげもなく、ひたひたに入れているのに、カレーはいつもルーが
少ないのである。なぜもっとルーを入れないのか」
これも「我が意を得たり」であった。
私の場合は、レストランのカレーのように「ルーをごはんの半分に
だけかける」ということはしない。
ごはんがほとんど見えなくなるくらい全体的にルーをかける。
これを我が家では「全かけ」と呼んで、半分にしかかけない「半かけ」と
区別している。
なぜそうするかというと、やはり最後にご飯だけが残るという
「不測の事態」を回避するためである。
こういう思考をするようになったのは、学生時代からである。
学生時代は貧乏だから、米はあってもおかずを買うお金がない。
だから、いかに少ないおかずでご飯をたくさん食べるかという
ことを考えるのである。
そこで、計画性や問題解決能力、マネージメント能力を養った(ウソです)。
東海林さんも早稲田の貧乏学生時代に同じような経験をしたらしい。
漫画家として成功しても庶民の感覚を忘れていないところに
私は彼の凄みを見る。なかなかできないことである。