生きる力

生きる力というのは、どういうことを言うのでしょうか?
ブータン、タイ、モンゴルというアジアに住んだ人の話を聴いて、
考えさせられた。
ブータン人と山奥に2週間の調査に行くとき、彼はバッグにたくさんの
物を詰め込んでいくのだが、ブータン人はいくらかの着替えと、
ウィスキーだけをもっていく。
なぜウィスキーかというと、「遭難したときのため」だという。
防寒具とか、そういうことじゃないんです。
たくさんの物をもっている日本人を見て、
「弱いねー」というのだそうだ。
「俺たちは物に頼らなくても生きていけるもんね」という
強烈なプライドがある。
ものすごくカッコいいと思う。
物がないから、何でも自分たちでつくるし、なければ誰かと交渉して
借りてくる。物がなくても状況を打開しようと知恵を働かせる。
こういうのを本当の意味で、生きる力というのではないか。
物がなければ何にもできない生活になっている。
確かに、もはや車にカーナビがないと、どこにも行けない
脳になってしまった自分を感じて情けなくなることがある。
もしカーナビがなければ、太陽の位置で方角を知り、道の具合で
「この先は行き止まりか否か」を判断できるようになるのだろう。
便利な物を作り出すことは、間違いなく体の機能が退化していく
ことでもある。だが、だからといって人間が考え出したものを
全否定するわけにもいかない。
いまの生活でいいのだろうかと考えて、結局、答えは出ない。
答えが出る日がくるのでしょうか。