あまり信じたくないような話です。
プロボクサーの坂本博之選手が引退するという話が、
11月24日の朝刊のスポーツ欄にベタ記事で掲載されていました。
彼は、子どものころから本当の意味でハングリーを味わったそうです。
児童養護施設に入るまで、飢えに苦しんだ少年時代を過ごしました。
それなのに、減量しなければならないボクサーの道を選んだのです。
彼は、体を傷めて得た大切なファイトマネーをおしげもなく、
自分が巣立った児童養護施設に寄付したり、試合後に必ず子どもたちを
たずねてお菓子を配っていました。
自分が受けた恩を返したいとの思いからでした。
そんな姿を、メディアがこぞって取り上げた時期がありました。
しかし、彼の人生から得る教訓は、タイガーマスクよろしく慈善活動を
するという美談だけにあるのではないと思います。
「世話になったり、恩がある人たちへ、言葉と行動で感謝の意を表し、
その人たちと積極的な関係を結ぼうとしたことであり、
自らの過去と同じような状況にある子どもたちへ、
行動をもって生きる道程を示し、その先頭を歩いている」
ということではないかと思います。
彼は、世界チャンピオンに4度も挑戦しました。
普通、チャンスは一度あればいいほうです。
それを4度も与えられたのは、ハードパンチで相手をノックアウトする
ファイトスタイルだけでなく、彼の人柄からくる絶大な人気が
あったからでもありました。
メディアの取材でも、ファンとの会話でも、まったく分け隔てなく、
誰にでも丁寧な受け答えをする姿が印象的でした。
世界チャンピオンにはついぞなれなかったのですが、
世界チャンピオンになってもなれなくても、
ボクサーであってもなくても、応援し続けたい人です。
1月6日の一戦が引退試合となるようです。
お疲れさまを言うにはまだ早い。
最終戦がテレビ放送されたら、永久保存版にするつもりです。