『アダプテーション』

『マルコビッチの穴』という奇想天外なストーリーを書き上げた
脚本家の、自虐的映画がこれ。
なんつっても、主人公が脚本家自身なんですからね。
映画会社から「ランの花を題材にした書籍を元に脚本を書け」
といわれたこの脚本家は、どうにも苦悩する。
最終的に自分を登場させてしまうのだ。
メイキングと映画を一緒に見させられる構成と言ったらいいでしょうか。
「この映画」を着想するまでを、映画にしてしまったわけです。
でもね、この脚本家が「書けない!」と言ってしまうあたりは
かなり共感する。ああ、それが言えたらどんなにいいか。
彼の「映画で何も起こらず、淡々と進むほうが現実的」
という意見にも共感する。
アダプテーションは「適応」という意味で使われているが、
脚本家自身が現実世界に適応できていない。
ハリウッドの脚本家という恵まれた仕事をしていながら、
少しもたのしそうではないし、いい脚本を書き、評価されているのに
自信が持てず、自らをさげすんでいる。
それでも恋や仕事を進めていかなければならない現実。
淡々と進みながらも、どこからか歯車が狂いだし、
どこかに悲しみが待っている。
ただ、どんな内容の映画でも最後に救いがあればいい。
この映画のように。