温泉とビールをつなぐもの

10月8日に埼玉県秩父市で行われる「龍勢祭り」という
ロケットを飛ばすお祭に行くために、近所のビール工場と
秩父の温泉をセットにしたツアーを考えた。
ビールを飲んだ翌日にロケットの打ち上げを見て、
温泉に入ろう――そういう算段である。
温泉とビールには、実は意外な接点がある。
温泉に入ったあとビールを飲むのがうまいんだよねえ
というのもあるが、もう一つある。
どちらも地下水を利用しているという点だ。
サントリー武蔵野工場では神奈川の屋根、丹沢を水源にしている。
秩父の温泉は八ヶ岳の自然があってこそである。
つまり森林がないとビールも温泉も楽しめないのだ。
ビールは丹沢の自然のろ過装置でおいしくなった天然水を使うし、
温泉も森林と大地を経由してさまざまな成分を含んで地上に湧き出る。
温泉に入ったあと、ビールを飲むと生きていることを実感する。
天然のものは体にいいという言い方をよくする。
天然のほうが体にいいのではなくて、天然のものが体にいいように
人間のほうが変わってきたということが言える。
あくまで自然のほうが主体で、人はその中の一部で細々と
生活しているに過ぎないのだ。
自然をありがたかったり、天然のものを重宝したりするのは
人がそうしないでは生き残っていけないからだと思う。
生き残ろうとする素直な営みが、緑を求めて人を温泉やビールに
向かわせるのかもしれないと思ったりする。