災害に弱い人工林

兵庫県岡山県の県境付近で降った大雨の影響で、
十数人の死者が出ている。
原因として、予想をはるかに量の雨が降ったことや、川が急角度で
蛇行する箇所が多く、いくつもの川が合流する箇所が氾濫したと
いった説が出ている。
森林インストラクターの勉強をしていると、水源涵養という言葉を
勉強する。水源として森林が果たしている役割を学ぶのだ。
水源涵養は、水量平準化と水質良化からなる。
水質良化とは読んで字のごとく、水の質が良くなること。
水は土壌が天然のろ過装置となって、不純物を排し、
ミネラルを吸着することによって「ミネラルウォーター」になる。
水量平準化というのは、河川に流れる水の量を平均化することである。
森林に降った雨は、一部は枝葉に捉えられ、残りは幹を通じて
森林内の土壌に吸収される。土壌が吸収する量を超えると地表流となって
地面の表面を流れ、短時間で河川に流れる。
つまり土壌が吸収する量が多ければ多いほど、水害が起こりにくいわけだ。
多量の水を吸収できる土壌というのは、腐食した落葉などが多い
カフカの土である。こうした土をつくるには落葉樹がなければならない。
ところが、日本は戦後、常緑の針葉樹ばかり人工林として植えてきた。
テレビで見る限り氾濫した地域の森林は人工林ばかりだった。
さらに、国内の人工林は、安い外国の木材に勝てず、伐採する時期に
なっているにもかかわらず、切られずにそのままになっている。
するとどうなるか。
枝と枝がくっつき、林内は暗くなる。
林の中の地面にまで光が入らず、植物は育たない。
落葉も少ないので、土壌が流れやすくなる。
しかも針葉樹は広葉樹に比べて根を浅く張るので、
土を根によって土を固める効果も薄い。
そういう条件が重なって災害が起こったのかもしれない。
いまやっと広葉樹を植えようという試みが官民でなされている。
木を切って使わないなら、水を確保したり、災害に強い目的の
森林をつくろうということである。
森林の水の吸収量はダムの吸収量をはるかに上回ることはよく知られて
いるが、その「天然のダム」の質も今後考えていかないといけない。