流行の歌を30代が知らないワケ

めっきりCDを買わなくなった。
なんでか?
今のCD制作っていうのは、ターゲットが10代なんですよね。
だから、歌手の見た目も歌詞の内容もそれっぽい。
特にぼくは歌詞もよく聴いているほうなんで、今の歌手が唄う歌詞は
自分の環境とはマッチングしないんです。
女性アーティストだったら、「私は私で強く生きていく」だったり、
男性アーティストだったら、「夢に向かってくじけず生きていく」
だったりする。
もうそういうのとは違う次元でこっちは生きてますからね。
今はどういう内容を生きているかというと、
「矛盾と、不合理の折り合いをどうやってつけるか」とか、
「バランスを取りながら、突出するにはどうするべきか」などと
いうことに頭を悩ませているわけで。
「悔しかったら、われわれ30代にピンとくる歌を書いてみろやい」
と思う。
10代のころは将来の夢と恋愛が2大テーマなんだけど、
30代になると「仕事の充実」と「家庭の安定」が2大テーマになる。
これをテーマに歌詞を書こうとすると、問題が多様なだけに
多くの人に共感される楽曲をつくるのが難しくなってくる。
でも、老若男女を問わず、誰にも共通のテーマとして
昔からあるものがある。
それが「死」と「故郷」だ。
28歳にしてデビューしたアンジェラ・アキという歌手がいるが、
彼女は『HOME』という曲の中で、故郷について唄っている。
HOMEは必ずしも故郷を意味せず、自分をつくったベース
としての故郷(人や思い出)がテーマだ。
彼女は年齢も近いし、育ちが岡山ということもあって
こちらで勝手に親近感を覚えているのだけど、
彼女がリアルに実感するところだから、人に受け入れられるのだろう。
それにしても、アーティストが自分の年齢が上がっていくにつれて、
若い人をファンに取り込みつつ、年齢相応の歌を唄っていくことは
とても難しいことなのだろうなあと思う。
若いときに売れてても、おじさんになったら音楽プロデューサーや
バックバンドになっている人が多いもん。
あと、20年経って70代のロックシンガーが「死」について唄ったら、
そのときの超高齢化社会の日本で受け入れられるだろうか。