「せっかく酔ったのにもったいない」

日本には「もったいない」といういい言葉があると
言ったのはマータイさんという、ケニアの環境活動家だった。
「せっかく酔ったのにもったいない」と言ったのは、
お酒に強いある女性だった。
私にとってこの言葉は衝撃であった。
どういうシチュエーションだったかというと、
「私の周りにいるあまり酒に強くない友だちは、居酒屋に行ったあと、
コーヒーを飲みに行こうとする。私は、〝なんで? せっかく
酔ってるのにもったいない〟と思うのよね」
と言っていました。
酔っているのに「もったいない」アンテナは冷静に作動している。
お酒代もそうだし、アルコールとしても「もったいない」という
ことなんでしょうな。
しかも「せっかく」という言葉がついている。
「それほど酔うことが大変なことなのだ!」という新鮮な驚き。
私みたいに酒が弱い人は、また飲んで酔えばいいじゃんと思う。
しかし、大量に飲まないと酔った状態にもってけない人は
「せっかく酔ったんだから、飲み続けてこの状態を維持したい」
と思うようなのである。
酔っている人を「できあがっている」ということがありますね。
酔ってる状態にもってくまで苦労するから、飲み続けて酔うと
それは「完成」するということなのだ。
酒が好きな人は自分を「完成」させるために居酒屋に行くのだ。
飲む過程はさながら「自己の創造」「アイデンティティーの構築」
と言ってもよい。
だから彼らはビール、焼酎、ワインと味を変え、飽きないようにして
身体の残留アルコール濃度を高めていくというわけだ。
大変だなあと思う。
ともかく、こういう「もったいない」の使い方もあるのだなあ
と感心しましたね。
マータイさんにも教えて差し上げたいものです。