おいしい酒

私はこのブログでは、しょうもないことも真面目なことも
書いてますが、友人と飲む席では政治や経済の話はあまりしません。
本当に仲のよい友だちとは政治や経済の話、仕事の相談事などを
しますが、それ以外ではみんながたのしめる話題にします。
でも、年末のあのお笑い番組はおもしろかったとか、
昔の思い出を振り返るだけの話だけで終わると、
帰りの電車ですごく時間を無駄にしてしまったように
感じてしまうのです。
あまり酒が飲めないのに酒の席に付き合うのは、
同席した人の価値観とか感性とか、それ以前に人生などを聞いて、
「ああ、そういう考えもあるか」
「こんなこと自分は考えもしなかった」
「そんな人生もあるんだな」
と思えると、とても自分が成長しているような気がして
得をしたよう気分になるのです。


私らの世代は、間違っても表立ってドロにまみれる人が
カッコいいという世代ではありませんでした。
共感を得る漫画の主人公は、星飛雄馬ではなく、上杉達也のほうでした。
暑苦しい人よりは、ちょっとニヒルなほうがいいわけです。
みんながたのしむ席で真面目なことをいう人は、
「真面目なことを語っちゃう、空気の読めない人」でした。
夢を語るのは、女の子を口説くときだけで、
それ以外で夢を語ると、暑苦しい人と思われたのです。
シニカルなニヒリズムをもつ人がかっこいい人のように思われ、
本気で世の中のことを考える人はいつも煙たがられました。
今でもこのブログで書いているような主張を飲み会で言うと、
「どうしたんだ今日は」
「具合でも悪いのか」
「ちゃんといいもの食べているのか」
「不治の病になったん?」
「メガネかけてたっけ?」
と心配される始末です。
「あいつはかたいことをいうやつだ」と思われているのかもしれません。
でも、私はいつ死ぬかわからないので、
飲み会の席でも1分1秒を無駄にしたくないのです。
私は酒が飲めないからそうなるのかもしれません。
他の人はどんな酒の飲み方をしているのだろう。
「どうでもいい、ライトな話をして、しばし現実を忘れたい」
そういうことでしょうか。
そんなにしんどいのでしょうか。
私はいつも酔った人の話をシラフに近い状態で聞きます。
酔った人は、いつもは腹にしまっていることを話してくれます。
私はそういうことが聞きたいのです。
でも、中には私と同じような人もいます。
幸い、一緒に仕事をする同僚たちはいつも話に付き合ってくれます。
グチなんかこぼす人はいませんし、いつも世の中を批判し、
いいことはいい、悪いことは悪いと言える人たちです。
私にとって、飲んでいておいしい酒とは
つまりそういう酒のことです。