映画『県庁の星』にみる官民意識

県庁の星 movie

この映画は、役人意識と民間意識がどう違うのかということ、
仕事を一生懸命することの大切さを描いていると感じた。
ストーリーは、県庁のエリート職員である主人公が、
民間スーパーに研修に行く。そこで出会ったパート女性と
対立しながらも、スーパーを改革していくわけですね。
詳しくは映画なり、小説に触れてもらうしかないんですが、
この映画を見て、『スーパーの女』(伊丹十三監督、宮本信子主演)、
『生きる』(黒澤明監督、志村喬主演)という二つの映画を
思い出した。
『生きる』の中で役人自身が言ういいセリフがあった。
「何もしないこと以外は過激行為なんだから」
「公園のゴミ箱ひとつ片付けるのにも、そのゴミ箱が一杯になる
くらいの書類が必要なんですからね」
「ハンコ、ハンコ、ハンコ!」
こういったステレオタイプで公務員を眺めている人は多い。
『生きる』では主人公は何もしてこなかった役人なのに、
『県庁の星』はエリート職員なんです。
何もしない職員も問題だけど、「民間にはできない」という
思い上がったエリート意識も問題。
でも、一番問題なのはその業界なり、社風なり、帰属している組織の
行動規範に染まりきってしまい、感覚が麻痺することだ。
これには官も民もない。
役人は役所の感覚で凝り固まってしまい、スーパーはスーパーの感覚で
凝り固まってしまっているんです。
主人公の「県庁さん」は最初からスーパーを一段低く見ているし、
スーパーは「しょせんは役人」と見下している。
自分がいる組織の規範に囚われて、何かを学ぼうとする意識がない。
お互いがお互いを蔑んでいる姿勢からは何も生まれない。
官には民のやり方に学ぶべき点があるし、逆に
民にも官のやり方に学ぶべき点がある。
「官は全部ダメ、民は全部よし」というのは、まったく間違っている。
そういう意味では、スーパーの人たちが「県庁さん」の必死さに
感化されていく過程が見ていて清々しい。
学んだのは、本当はスーパーの人たちだったんですね。
「県庁さん」が学んだのはもう一つあったはず。
それは「自ら動いて汗をかくこと」。
一生懸命に仕事に取り組むことに官も民もありません。