安心と安全があってこそ

名前が同じせいか、どうしてもあの渦中の人を
それほど悪い人と思えない。堀江貴文氏のことだ。
けれど、選挙前の民主党幹部との話で、「国民はバカだ」という
意味のことを言ったという。それが本当ならば、残念なことだ。
国民はバカだっていうけれど、彼が住んでいる六本木ヒルズ
つくったり、移動するための道路や乗り物をつくったり、
食べるものや着るものをつくったりしているのは
いったい誰なのか。
治安を守ったり、病気を治したり、ライブドアに入社するかもしれない
人間を教育したりしているのは、
いったい誰なのか。
たくさんのお金は稼げないかもしれないが、
日々、真面目に、コツコツと、地味だが、地道に、着実に働いている
多くの〝バカ〟な国民ではないのか。
安心安全の社会インフラがあってこその企業活動ではないのか。
そうやって、地に足をつけて生活している人々を愚弄するような
人や社会は絶対に、絶対に、許せない。
「そうしたモノやサービスのためにお金を払っているのだ」
と言うかもしれない。そう言う人と話しても話は平行線だろう。
そんな人が、少しずつ増えているような気がしてならない。
拘置所の中で、自分がどれだけの〝バカ〟な人々の、どれだけの有形
無形の支援を受けてきたかを、突き詰めて考えてみて欲しいと思う。
バブル崩壊後の国民財産の喪失を「失われた10年」というが、
最も大きな損失は、地道に働き、人と社会の役に立つという、
日本人が古来持っていた美質だった。
完全に失ったとは思わないが、これをまた元の通りに戻すには
長い時間がかかりそうだ。