「まんが日本昔ばなし」で気づいたこと

TBS系列でデジタルリマスターによる、「まんが日本昔ばなし」が
再放送になったことを前に書いた。
1、2回の「録画忘れ」がありながらも、見ているのだが、
見ていて、2つのことに気がついた。
一つは、日本は自然が豊かだということ。
もう一つは、おそろしいもの(化け物、狐が化けたもの、天狗、貧乏神)
などへの「普通」の対応だ。
昔はほとんどの人が山の中に住んでいた。都市自体が存在しなかった。
だから、山の中の話が多いのだが、それにしてもこれほど日本が
自然に恵まれていなければ、こうした民話は出てこなかったかも
しれないと思う。
で、そういう山の中に前に書いたような「おそろしいもの」が登場
するのだが、登場人物たちが、そうしたものに対するとき、
とても普通に対応しているのが印象的なのだ。
最初はちょっと驚くのだが、あとは人間と同じように接する。
驚いて逃げまくるのでは話が成立しないわけだが、
それにしてもあまりに普通の対応なのだ。
こんな話があった。
ある貧しい夫婦がいて、その夫婦の家には貧乏神が住みついている
のだが、夫婦があまりにも健気に働くので、正月になると、
福の神がやってくる。
貧乏神は「もうここにはいられない」と言って泣くのだが、
夫婦は「まあまあ、ずっとここにいればいいから」という。
えーって思う。いいの?って思う。
そしたら、あんたらずっと貧乏なんですよって思う。
でも、「貧乏でもたのしいから」というのだ。
で、結局、貧乏神に加勢して、福の神を追っ払ってしまう。
どうですか?
自分の家に貧乏神がいたら、嫌っていうより、怖くないですか。
でも、普通に「かわいそうなヒト」みたいな感じで対応している。
昔の人と現代人ではそこまで違うのかと思う。
この話のように、おそろしいものへの普通の対応は、昔の日本人に
とっては普通のことだったのだとわかる。
ぼくはこういうところに日本人の美質というか、美意識のような
ものを感じる。こういう話が今まで受け継がれてきたのは、
日本人の中に「おそろしいもの」に対する畏怖の念があった
からだと思うのだ。
まんが日本昔ばなし」を懐かしく見るのは、番組を子どものころ
見たからではなく、今では失われつつあるように見える
日本人の美意識が垣間見られるからではないかと、勝手に分析して
みたりするのでした。