武士の一分

山田洋二監督、木村拓哉氏主演ということで、早くから話題になった作品。
殿様の食事の毒見役をする侍を、「キムタク」がどのように演じるか、
興味津々で見始めた。
思ったよりよかった。落ち着いた演技であった。
けど、演技的にも脚本的にももっと人物の掘り下げがほしかったな
という気がする。
木村氏の演技はいいのだけれど、やっぱりアイドルなだけに、
どうしても今風になってしまう。あと5歳年を取っていれば、
適度に渋みが出たのではないかと思う。
(ここからはネタバレがあります)
ストーリーは、貝の毒に当たって木村氏演ずる侍は失明する。
今後の生活を懸念した妻は、彼の上司に相談して、お上に口利きを
してもらい、恩給として録を継続してもらう約束をする。
だが、妻はその上司とあらぬ関係に・・・。
それを知った主人公は妻を離縁する。しかし、上司がお上に口利き
していなかったことを知って、この上司に果し合いを申し込む。
この映画のテーマは、「夫婦のお互いの思いやり」だ。
深い愛情で絆は結ばれているが、相手を思いやるばかりに
相手が必ずしも望まない結果を招く。
しかし、結局、夫婦の深い愛情はそうした不測の事態も乗り越えていく。
この映画が映し出しているのは、相手を思いやるという、
特に日本人が持っている美質への憧憬であったのではないか。
この日本人的なものを映した映画を、ある種の懐かしさをもって
観た人も多かったのではないか。
静かでしっとりとしていて、いかにも大人の映画であった。