先日、昔交際していた女性に似た人を朝の通勤電車で見かけた。
背格好も似ていて、つり革につかまるその横顔に
一瞬、昔の思い出がフラッシュバックした。
その女性は、ぼくよりも先に電車を降りていった。
その日の夜、大学時代の友人と久しぶりに飲んだ。
4人で集まったのだが、その中に、昔のその彼女のことを知る
友人が1人いた。
ふと、その友人が沈黙を突いて言う。
「●●ちゃん、イタリアに留学してるらしいよ」
ぼくのほうから彼に彼女についての話題をふったわけじゃない。
彼のほうから勝手にそんな話を持ち出してきた。
そのことを聞いた瞬間、朝の女性の横顔が浮かんだ。
ふっと笑った。
笑うしかなかった。
彼女はイタリアに行って、今はぼくが通勤する同じ路線はおろか、
日本にも住んでいなかった。
昔のことなどもうどうでもいい。
もう何年も昔のことを、ふっ切れたかふっ切れていないかなどと
振り返ることさえバカバカしい。
甘美な思い出に浸っているヒマなどない。
いまこの目の前にある一瞬をどう生きるかに
もっと真剣にならなきゃいけないな。
