『天国までの百マイル』を観る

こういうのに弱いんですよ。
作家の浅田次郎氏の原作、『天国までの百マイル』という映画を観た。
あらすじを一行で書くとこうなる(以下、ネタバレあり)。
バツ1のダメ男が、心臓を患っている母親を病院まで100マイル搬送する話。
このダメ息子(やっちゃん)は心臓外科手術の名医に執刀してもらうため、
別の病院に母親を移すことになる。
ところが、救急車はお金がかかるのに、自分は離婚した元妻に
子供の養育費を払っている身分でお金がない。
周りの人に金策して回るのだが、無情にも彼の兄弟は、
母親の執刀に乗り気ではないのであてにならない。
結局、160キロ(100マイル)を自分で運転することにした。
ダメ男が母親を助けたいという一心で取る行動によって、
自ら覚醒させていき、泥沼から脱するまでを描いている。
この作品には、泥沼から脱するきっかけとなった女性が登場する。
大竹しのぶが演じるマリという女性なのだが、この女性、
いわゆるダメ男にはまってしまうタイプの女性なのだ。
ダメ男にハマってしまう女性は、自分に自身が持てず、
ダメ男を支えることで自分の存在意義を見出すのだそうだ。
こういう話は実際にあるのだろうな、と思う。
それは別にして、周囲の人が彼に見せるやさしさとか、
見ず知らずの人のやさしさとか、そういうのに弱いぼくは
まったくもってしてやられてしまいました。
とにかく印象に残る映画だった。
一番、印象に残ったのは、ダメ息子のやっちゃんが言った台詞だった。
車で母親を病院に搬送するとき、自ら運転していたやっちゃんが、
メシを食うかと母親に聞く。やっちゃん自身は食べなくても平気だから、
やっぱり早く病院に行こうというが、母親はやっちゃんに食べさせたい
ために、自分が何か食べたいというのだ。そう言う母親にやっちゃんは言う。
「俺やっとわかったよ、子供にメシを食わせるっていうことが。
かあちゃんはいつもそうやって俺たち子供にメシを食わせて
くれてたんだな」
やっちゃん自身、養育費を元妻に渡すだけで親らしいことはしていない。
親が子に食べさせるということは、銭カネだけの問題ではないのだ。
そのことに気づいたやっちゃんの言葉に、深いものがあった。
親が子を思う気持ちと、子が親を思う気持ちが伝わる映画だった。