危険な思想 

隔月で子どもたちが通った幼稚園の「お父さんの会」に

出席している。

この会では父親が集まって日々の悩みの相談や、育児の引き出しを

披露し合って、刺激や知識を得たりしている。

以前、「子どもが『鬼滅の刃』のキャラが発する「死ね!」の言葉を

マネするので、どうしたものかという話があった。

このアニメの映画版はPG12指定という年齢制限になっている。

なので、そもそも幼稚園児が観るのは

ふさわしくない内容ということになっている。

特に就学前の幼児の場合、フィクションとノンフィクションの区別が

できないからそもそも見せるべきではない。

小学生もできれば4年生以上からがいいだろう。

こういうのがあると必ず出てくるのが、

「乱暴な言葉遣いを覚えると、そういう人間になる」ということ。

もちろん、影響はあるんだけど、

1つの原因(乱暴な言葉遣い)から1つの結果(乱暴な人間になる)と

いうような、1対1の因果関係が成り立つような考え方は

とても危険だということ。

人間はそんな単純なものではない。

茶道を習ったらみんなが落ち着いて上品な人になる

なんてことがないのと同じだ。

なぜか人は、「よい影響はなかなか根付かない」と考えているのに、

「悪い影響は簡単に根付いてしまう」と考えてしまう。

(なぜこうなるかというと、「人の道を外れる」行為はある意味で

魅力的であるからだ)

こういう短絡的な因果関係の結びつけがはびこると、

「これはダメ」という警告ばかりが世の中に氾濫する。

実際、子どもが通う小学校のPTAの文化祭の出しものとして、

夏場に水鉄砲を使ったものを提案したら校長から拒否された。

「ピストルのようなもので人を狙うのは容認できない」とのことだった。

こんなのは些末なことだが、「1対1の因果関係」が成り立つような

短絡的な結びつけは子どもたちの発想を狭め、社会を息苦しくさせる。

こんなことは社会学ではもう何十年も前から指摘されてきたことだが、

いまだに広く一般に行われている。社会学者が発信していないからだ。

どうにかしないといけない。