日付が変わったころ、イチロー選手の引退記者会見がはじまった。
私はイチロー選手のことがあまり好きではなかった。
記者の質問を、ちょっと見下したような言い方で返すことがあり、
同業者には親近感があるので、自分がバカにされているようで
彼に対していいイメージを持てなかった。
ただ、言っていることは独特でおもしろみがあるから、
その点は好きだった。もちろん、プレーぶりも素晴らしいが。
会見でこんな言葉があった。
最初の2年、18、19の頃は1軍に行ったり来たり。
「行ったり来たり」っておかしい? 行ったり、行かなかったり?
行ったり来たりっていつも行ってるみたいだね。1軍に行ったり、
2軍に行ったり。そうか、これが正しいか。
これを聞いて、言葉に対して緻密さがあるのがわかる。
同じ会見で「野球は頭でやるスポーツ」と言っているのだが、
自分の頭で考えることが必要で、その考えるときには言葉が大切。
言葉を緻密にすることで、考えることの論理性が明確になり、
考えを整理することもしやすくなる。
「言葉に対する繊細な感覚」が思考を育て、
プレーに反映されている
彼が一流を超えて超一流であることの理由はここだったかと
今さらながら気がついた。
こういうところも、若い選手には見習ってほしいものです。