映画「日本のいちばん長い日」

映画というのは「偏った意見の押し付け」であると思う。
「自分はこの事件をこういう風に見ている、
みなさんはどう思うか?」
を問うのが映画だと思っている。
だから、独断と偏見であってよいのであって、
本作のように、ノンフィクションを題材にしていたとしても、
この問いをしてほしかった。
そうすることで、戦争を行うことの愚かしさが浮き彫りになる。
この映画は、史実を丹念に追い、リアリティを追求するうあまり
映画的な要素が少し足りなかったかと思う。
映画的な要素というのは、わかりやすくて、誰もがこの映画が
何を言わんとしているかが理解できることだ。
ただ、当時を生きた人たちの情熱は伝わってきた。
「反乱軍」としてクーデターを起こし損ねた、陸軍若手将校たちの
情熱は特に伝わってきた。
戦時下ではあのように冷静さを失った狂気の状態にならなければ、
とても戦争などやっていけなかったのだろう。
そういう狂気の状態をつくりだしたのは、そういう教育を彼らに
施してきた上の世代だったわけで。
この映画は何をいいたかったのか、ひとつだけ思い浮かぶのは、
方向性が違っていただけで、登場人物たちはみな国と国民のことを
考えてギリギリの行動したのだなということ。
いまは個人主義なので、こういうことを望むべくもない。
それは時代が違うからなのだけど、ある意味で国家のことを真剣に
考えなくてよいいまは幸せなのかもしれないね。